※グロ注意


MZDのお肉屋さん




○月×日

活きの良いMZDが手に入った。両手両足を縛り、影を封じ、薬を飲ませて力を出せないようにしてただの少年にしたというのに彼はまだ抵抗をやめようとしない。 抵抗といっても縛られているので抵抗らしい抵抗は出来ないが。精精私に暴言を吐き、睨みつけるのが限界なようだった。 彼は自由が利かない自身の体に身悶えし、時々その体を捩れさせ何とかして縄を解こうと努力していたが、それも先ほど無駄だと理解したのか今では嫌悪を露わにした表情で私を見ながら暴言を吐きつけるだけだ。 しかしその顔は私の感情をさらに膨張させるだけの行為でしかないことを彼は知らない。
私は笑った。

「俺をどうする気だよ。離せ」

彼は怒りに満ちた顔で言った。私は答えない。

「こんなことをして、ただで済むと思ってんのかよ」

このMZDはなかなか面白い冗談を言う。今自分がどういう状況なのか理解していないのか、それともただのつまらない意地なのか。 兎にも角にも、私は別段彼を黙らせる必要はなかった。むしろ、いつまでその無駄に良い威勢が続くのか、見物ですらあった。
私が何も答えようとしないのを見て、彼はまたその眉間に皺を増やした。その顔は確かに怒りを表していたが、同時に不安を感じているようでもあった。 私は事が思い通りに進んでいるのを見て、また笑った。これから起こるであろう素晴らしい出来事を想像し、頭の中で咀嚼しているだけでも最高の快楽だった。
私がおもむろに席を立つと、それと同時にMZDの肩が僅かに震えた。私はそれを見逃さなかった。私はMZDに少しずつ近づいて彼の前に立ち、しゃがみこんで彼の頭を撫でた。 やわらかそうな彼の全身の筋肉が固まり、皮膚に鳥肌が浮き出ているのが窺える。

「待っててね、今、最高のショーを披露してあげるから」

私は素早く立ちあがると、奥の部屋へゆっくりと足を進めた。少し後ろを見やると、MZDはまだ固まったままで、声も出ないようだった。



「おまたせ」

「・・・・・・!?なん・・・で・・・」

彼が想像通りの反応を見せてくれたので、私は内心ほくそ笑んだ。彼の視線は、私が持つ縄に繋がれているMZDにくぎ付けになっている。 私が引き連れてきたMZDといえば、力なくうな垂れ顔から汗を滲ませ苦しそうな表情を浮かべていた。

「おい、5神、なんで、おい、しっかりしろ!」

彼は声を張り上げ、叫んだ。なるほど、こいつは5神と呼ばれているMZDらしい。私にとってはどれも同じに見えるが、彼らの中ではハッキリとその種類が 分かれているようだ。私にとっては瑣末なことだが、ふいに彼らへの興味を湧かせたことは自分自身気付いていた。
それよりも、MZDに種類があるというのは少々厄介なことではあった。どうやって彼らを呼び分ければいいのか悩むところである。 とりあえず私は最初に連れてきたMZDをそのままMZDと呼ぶことにし、後から連れてきたMZDは彼が呼ぶように、5神と呼ぶことにした。
まあ、呼び分けなどこれからさして重要になるわけでもないのだが。

私は机の上に置かれた肉切り包丁の柄をゆっくりと握った。刃渡り18cm、全長32cmの包丁で1kgにも満たない重量だが、堅いものを切るのに適した私のお気に入りの包丁だ。 私が肉切り包丁を握った時、彼らの顔がさらに強張るのを見た。何故ここに連れてこられたのか、さっきまで知るよしもなかった彼らが、今から一体何が起こるのか理解し緩やかに訪れた絶望に 顔を歪める瞬間だった。私は笑いだしそうになるのを堪えた。
私は縄で繋がれた5神を半ば強引に床に寝そべらせる。5神は小さく呻いた。
そして、私はゆっくりと、肉切り包丁を振りおろした。

「やめろ・・・・・・!!」

MZDがそう叫んだ瞬間、勢いよく5神の腹から血が噴き出した。5神の中を巡っていた全身の血が、切り裂かれた傷口から噴水のように弾け、私とMZDを濡らす。

「あ・・・あ・・・」

視界の隅でMZDが呻いている。MZDの顔はサングラスと帽子で半分以上隠されていたが、惨澹な感情で埋め尽くされていることだけはハッキリと分かった。
私は余韻に浸っていた。今まで体験したことのない、気持ちのいい余韻だった。
ふと先ほど大量の血を吐いた5神を見ると、顔からはすでに生気が失われており、既に死んでいるようだった。私は酷く後悔し、一握りほどの失望を感じていた。 神といっても中身も普通の人間と一緒だったし、何より少し切っただけですぐに死んでしまったからだ。神というのは思っていたよりもデリケートなようだ。

「ごめんね、すぐ終わっちゃったね」

私は5神の腹からでろりと流れた内臓を取り出し、大きな金属製のボウルに移しながら言った。すると、さっきまで絶望に染めていた表情を変え、MZDは鋭い眼光を私に向けた。

「ふざけるな、何で殺した!」

よくもまあ、まだこれだけ声を張り上げられる元気があるものだと感心する。しかし今彼を奮い立たせているのは確実に私が5神を殺したことへの怒りだろう。 それもこれほど呆気なく、あっさりと命終わらせてしまったのだから、彼が怒り狂うのも無理はない。 といっても厳密に、神というものが生きているのかどうかというのはまた別問題だが。

「おい、聞こえてんのか、何で殺したんだって聞いてんだよ!」

彼はまた、言葉の端を僅かに震わせながら叫んだ。

「売るためだよ」

私はあっさりと答えた。

「・・・は・・・?」

MZDは私の言葉の意味を理解できていないようだった。

「MZDという種族を殺したい、虐待したい、食べたいなんて者が世の中には数えきれないほどたくさんいる。 私もその一人だが、普通に考えて神様を捕らえようなんて出来るわけもないから、みんなしようとはしないだろう? だから、私がやったのさ。ある人・・・いや、厳密には人とは言えないかもしれないが、その人が協力してくれてね。 神の力を抑える薬を貰ったんだ。それを使えば、ほら、この通り、神である君は何もできず、目の前で仲間が殺されている というのに身動き一つできないでいる」

「ぐっ・・・」

MZDは言葉を詰まらせた。神でありながら何もできない自分を恥じ、悔いているのか、 それとも、ただ反論する言葉を失っただけなのか。

部屋はしんと静まりかえっていた。が、それは朝方の町並みのような、また、橙色の光が差し込む夕方の部屋のようなゆったりとした静寂では決してなかった。 神経が研ぎ澄まされ、絶望で今にも心が拉げてしまいそうな、そんな静寂だった。

「・・・話が逸れたね。要するに、肉屋として君達を殺し、MZDの肉を欲しがる人達に売ろうってことさ。 殺したい、虐待したいというのは、現に私がその恩恵を受けられているから、言うまでもないね」

絶望にひったりと体を浸していく彼を見ていると、加虐心を掻き立てられるのを感じる。 それでも私はその感情を表に出そうとはしなかった。出してしまえば、このMZDですらすぐに殺してしまいそうだったからだ。 急いてはいけない。まだ始まったばかりなのだから。
そう考えると、5神をあっさりと殺してしまったのもある意味正解だったのかもしれない。 最初からじっくりゆっくり殺して楽しんでしまっては、つまらないからだ。 私は専ら、好物は後のほうまで取っておくタイプだったのだ。

「さて、私はこの5神を捌かなければならないから、ここで失礼するよ」

私は5神の内臓が入ったボウルを片手で持ち、もう片手で切断された5神を担いだ。 思っていたよりも軽かったのは、大量の血が抜けたからだろう。 それもあるだろうが、もしかしたら神様の魂とやらは、人間の魂よりも重かったのかもしれない。
私は調理室へと足を運んだ。背後ではMZDが悔しい顔で私の背中を見つめているに違いない。



私はまた笑った。